G.ヴェルディ『オテロ』英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2016-17

<初心者オススメ度★★★★☆ 愛好家オススメ度★★★★★>

<一緒に観る人・・・嫉妬深い夫、もしくは妻と>

『Bunkamura オテロ』のお口直しに行ってきました。

少なくとも三流昼メロにはなっていませんでしたが、超一流歌劇場のROHですからそこは当然だとして、生のオケと生合唱を聴いた後の「TOHOシネマズ」の音響には欲求不満が残ります。

そして、オテロを歌ったヨナス・カウフマンの声の輝かしさに陰りが見えてきていることが気になりました。

ツイッタ-では絶賛されていますが、「声の不調」と書いている現地評を見つけてホッ。

だってこの人、もっと上手いよね???

高音を張るときに声が割れかかるのをごまかしながら歌っていたし、演技にも言われているほど身が入っていなかったような。

カウフマンといえば毎回その声の迫力に圧倒されっぱなしで、例えばグノーの『ファウスト』を観た時私は、お口がポカーンと空いちゃったままになってしまいました、凄すぎて。

でも今回はちょっと違っていた。。。

そのことをオペラに詳しい同級生に言うと、「これだけの難役だし、初オテロだから、声の衰えとみるのは早計では。」との意見。

そこで、アレクサンドル・アントネンコプラシド・ドミンゴの若い頃のオテロ(舞台LIVE)を観返してみました。すると確かに色々細かくしくじっていて完璧ではなく、この役の歌唱の難しさを改めて感じた次第です。

ただ映像全体の印象として、直近で話題になった2015-2016 METライブビューイングの『オテロ』と比較するとやはり随分と差は感じました。(オテロはアントネンコ

照明やカメラワークの不味さが目立ち、カメラの台数やテクニックの差が素人の私にもわかるくらい歴然としていました。

そのあたりのことも公演全体の印象に影響があったかも知れません。

一つ肝心なことは、オテロの死のシーンで、知らぬ間に涙が頬を伝ってきたのがMETの『オテロ』で、今回はそうでもなかったということです。

オペラは魂(たましい)揺さぶられてナンボだと私は思うのです。

解説にまともな字幕が付くようになり、だいぶマシになってきた『ROHシネマシーズン』ですが、『METライブビューイング』の独走態勢は当分続きそう。(当初は解説部分に字幕が無かった)

とりあえずROHは日本の公式ウェブサイトに、配役くらいはちゃんと書いておいて欲しい。

シネマシーズンが始まった当初は簡単なプログラムが配られていましたが今はそれもなく、サイトにはオテロ、デズデーモナ、イヤーゴの三人だけで、カッシオすら記載がありません。

と、ちょっと辛口鑑賞日記になってしまいましたが、カウフマンの初オテロということでオペラ史に残る公演の一つであることは間違いなし。

さて・・・ムーア人であるオテロの顔を真っ黒にメイクしない、というのが最近の流行りのようです。

※映画の中のヘアメイク『オテロ(otello)』ROHシネマシーズン