オペラと私

母が亡くなったのは私が26歳のときでした。

43歳でS字結腸癌を発症し、5年間の闘病の末でした。

私が子供だった頃、母はまだ元気で、地方の一軒家でしたから、天気の良い日は庭の大きな物干しにCMみたいに洗ったシーツを干していました。

そしてそんな時、母がよく口ずさんでいたのが、蝶々夫人(プッチーニ)の中のアリア『ある晴れた日に』でした。

田舎の青空というのは、本当に青いのです。

母の死後、ただただ悲しく、ただただ辛く、喪失感だけを抱えて、誰とも会わず、口もきかずに過ごした途方もない時間を埋めてくれたのが、オペラでした。

今も、溌剌として明るい母の澄んだ声の記憶を辿りながら、母の分まで観ようと劇場に足を運びます。

 

最近は高画質高音質での映画館上映も盛んになり、世界の一流歌劇場のオペラ公演を手軽な値段で鑑賞できるようになっています。

この「東京オペラコンシェルジュ」では、シネマ上映を含めたおすすめのオペラ公演をご紹介しながら、私の個人的な思い出の公演や大好きな録音(CD)や映像について書き残していけたらなと思っています。

安く観劇できる機会が増えたとはいえ、高額なのに当たり外れが多いのがオペラ。

さて、どの公演を観に行こうか、どのCD、DVDを買おうかと迷うのは私も同じですが、高額な出費が無駄にならないよう、皆さまのご参考になれば幸いです。